2010年



3月 兵庫

ヒダを見に兵庫まで行く。
この場所は20歳から5年に1度ぐらいの頻度で通っているが、それほど激減した様子も無く今回も1時間程の観察だったが成体8匹、卵嚢4対を確認できた。積雪状態で繁殖時期に1ヶ月ほどのズレがあってドンピシャの産卵時期を予測するのは難しい。今回は♀の確認が1匹だけで、産卵済みの個体だった。産卵はだいたい終了している雰囲気だったが4対の卵嚢しか見てないので、やや少ない気もする。もっとも探すには石をひっくり返さなければならず、産卵環境に影響を与える可能性もあるので最近は通ってる沢では、ある程度見たら詰めて探さないようにはしている。

見つけたヒダサンショウウオ。両方共♂

3月和歌山

兵庫でヒダを観察した後、和歌山へホンオオダイを探しに向かう。
今回で3度目の挑戦だが、やっとこ卵嚢と成体、幼生と3ステージ確認する事ができた。私の中では3日の法則というのがあり、かなり探すのが困難な種でも3日目(3回目)には探し出せるというものである。今回もその法則に当てはまる事になったが、観察に出かけ、見つける事ができなくても何故にいないのか考える事によって段々と出会えるようになってくるので不発も経験の1つになるのだ。

オオダイガハラはいくつかに区分されていて、Hynobius boulengeriの学名は紀伊半島の個体を指すようになったが四国の個体群(イシヅチサンショウウオ)とどう違うのか?遺伝子的な事でなく生活様式等、生態的な違いがどの程度あるのか知りたくてどうしても見てみたい種類だった。そして学名が付いている国産サンショウウオで唯一見た事が無い種でもあった。

結果として私の中では全くの別種だと確信できた。上画像はホンオオダイの卵嚢だが卵の配列が横に2列以上並び、四国産とくらべ卵嚢は硬い。産卵場所もイシヅチのように沢の岸近くや緩やかな流れではなく滝下等の強い水流の場所を選択している。


急斜面の伏流水を探していると急流なので泡沫が混じり、透き通る清流にも関わらず15cm下の沢床が見えない。白い泡沫の急流に青い光が一瞬見えた。咄嗟に手をのばすと本種であった。本年は降雪量が多く、水量豊かとはいえ、これほどな急流でイシヅチを見た事は無い。なんて美しい青なんだろ・・陸上だと光る青ではなく紺色と紫の間ぐらいの色合いだが、水中だと光の反射により右画像のように青く光る。顔つきも目が小さく鼻先が長く見える為、四国個体群とはだいぶ違って見える。

紀伊の山深い源流に潜む本種だが、釣り人のゲリラ放流の為、激減している。(オオダイに限らずだが)なんでわざわざ魚止めの滝の上にまで放流すんのかなぁ〜・・釣りさえできればいいんだろうか?放流鮎がオオサンショウウオに食べられちゃう話なんかより遥かに大問題で大犯罪だよ・・。生物の放流(放棄)は基本NGである。同一種であっても生物界にはキャパもあり、遺伝子問題、病気等容易に放流できる事では無いのに本来そこに存在しない種の放流なんてナンセンスを通り越している。

4月
徳之島

3月のオオダイガハラ観察で一通り学名付きの本邦産サンショウウオを全て見終わり、燃え尽きた感の私は久しぶりに南西諸島でトカゲとかが見たくなった。時は米軍基地移設問題で徳之島が注目されていた。徳之島はイボイモリもいんじゃん!い、行きたい・・。8年ぶり3回目になるのかな?飛行機がプロペラに変更されて嫌だけど久々に行く事にした。

報道陣がいっぱいだ〜。こんなに賑やかな徳之島は見た事がない。
島中で垂れ幕や看板に移設反対の文字が書かれている。
奄美諸島は戦後8年間だったか米軍支配下にあったそうで、年配の人はことさら反対のようだ。
賛成派の方も少数いるようだが、賛成と言える状況ではないのだと聞いた。基地移設となれば、治安や風紀は悪化するだろうが実入りは増えるだろう。ただあの島の人達が対応できるかな?実現すれば今とはだいぶ違った島になるかもしれないな。

左 ブラーミニメクラヘビ 右 サソリモドキ
南西諸島の洗礼というか、石をひっくり返せばゲテモノ達のオンパレードである。
画像に収めてある種はまだ許容範囲だが、ヤスデだのムカデだの巨大ナメクジだのゴキだの何だか分からんものだの・・かなり生理的に受け付けないが、何故か懐かしい。子供の頃憧れた南西諸島。成人してからはこれでもかと通ったものだ。

左 オキナワトカゲ 右 ヘリグロヒメトカゲ

滞在中はまだ暑くなく(22度前後)トカゲの類はヘリグロぐらいかなと思っていたけど綺麗な婚姻色のオキナワトカゲとキノボリトカゲも見ることが出来た。キノボリは木から落ちてきたが、グリーンの発色がとても綺麗でアホなようだが一瞬グリーンアノールかと思った。アオカナヘビも見たかったな〜。

左 イボイモリ繁殖水域 右 イボイモリ幼生

時期的に産卵は終わっていると思っていたが、まだ産卵中の個体も見かけた。水中にはとっくに成長した幼生もいるのにまだ卵じゃ餌になるだけじゃん。今年は例年より涼しい日が多かったからズレ込んでいるのだろう。イボの繁殖水域にはオタマはいない事が多いが、ヒメハブとガラスヒバァはしっかりいる。イボを狙わないでオタマを狙えよー(笑)

徳之島の個体群は他の個体群とちょっと違うところがあって、繁殖水域は完全な止水である(と思う)。ちょっとでも湧水が入る場所では見た事が無い。干上がりそうな水溜りでも産卵している(ある条件付)。わりと低地にも棲息しているが、近年は農薬の散布や開発によって見られなくなった地域も多いようだ。

左 バケツで繁殖してるヒメアマのオタマ 右 1cm程のリュウキュウアカの幼蛙

この2種とリュウキュウカジカのオタマはどこの水場にもいっぱいいた。
リュウキュウアカはやや山側に多かったかな。
リュウキュウアカは変態の時期を迎えていて、尻尾付で両足がはえているとイボ幼生と見間違って紛らわしい。夜に山間の渓流に入れば違うカエルも見れるはずだが1人だとそこまで気合が入らないなぁ。

ダムにより水没する山々

2010年に完成予定の徳之島ダム。主要産業であるサトウキビを夏の干ばつから守るために建設されるらしい。しかし東京ドーム6個分もの大きさのダムが必要だったのかね?この場所はアマミノクロウサギやイボイモリの良好な棲息地でもある。段階的伐採で環境に配慮とはいえ何匹のイボイモリを救出したのかな?移動のできるクロウサギはとりあえず逃げたかもしれないが、この地域の百単位のイボはおそらく全滅したろうね。種の保存ってなんだ?天然記念物ってどういう事?それは単に飼育してはいけませんというだけの意味である。

6月
長野

3月に燃え尽きた感の私だったが、やはりシーズンには自然と疼いてくるもんだ。
でもなんか出かけるのカッタルイ・・でも源流つめて何かサンショウウオ見たいな・・土日使っちゃうと週明け疲れたまま仕事しなきゃなんないしなぁ・・。日帰りで行こ!て訳で長野まで行ってきました。
6月だが、まだまだ山間部には残雪が多く、気温14度水温11度。
源頭部までは残雪が邪魔して行けなかったが、ハコネ成体を7匹確認できた。時期的には繁殖期なので伏流水中に産卵場所へ移動している個体が見れるかと思いきや水中で発見出来たのは1匹のみで他は全て陸上。♂の後肢は肥大してないし、ツメもない。
まだ産卵は先なのか?それとも参加しない連中なのか?まさかもう終わった?沢近くの石下や落ち葉下の浅い場所で見つけているから徐々に源頭部に向かっているんだろうな。

左 ハコネサンショウウオ 右 タゴガエル抱接

タゴガエルも産卵フィーバー中で、いたるところで鳴いている。
だいたいは♂の単独で発見したが3ペアぐらいは抱接しているのを見かけた。
画像のタゴ♀個体はお腹に卵が透けて見える。卵も伏流水中で確認した。
今回は4本の沢を見てきたが、全ての沢でハコネの幼生は棲息していた。

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